歯周病治療

歯周病とは?

歯周病は、細菌によって歯ぐきや歯槽骨が弱ってしまう病気です。歯ぐきや歯槽骨は歯を支える役割があります。症状が進行すると最終的には歯が抜け落ちてしまう恐れがあります。歯周病が重度にまで進行してしまうと治療に相当な時間を要したり、歯を失ってしまったりと非常にリスクの高い病気です。また、歯周病の怖いところはかなり進行するまで自覚症状が無いことです。

 

歯周病の原因とは?

歯周病は歯垢(プラーク)が原因で引き起こす病気です。歯垢とは細菌のかたまりの事を言います。歯垢が歯と歯ぐきのすき間に入り込み炎症を起こします。

歯垢を約2日~3日ほど放置すると歯石になります。歯垢の状態では丁寧な歯みがきで落とすことが出来ますが歯石は歯みがきでは除去することが出来ません。この歯石も歯周病の原因となります。

歯周病が及ぼす全身への影響

歯周病は生活習慣病の一種とされています。生活習慣病は悪化するとドミノ倒しのように一気に症状が進み最終的には命を落としてしまうことになります。これを『メタボリックドミノ』と呼びます。上の図のように上流から下流に向けて症状が悪化していきます。この図の最上流に位置するのが「歯周病・虫歯」です。メタボリックドミノを上流で食い止めるためには口腔ケアが非常に重要となります。

歯周病は口腔内への影響のみならず全身へ影響を及ぼす可能性があります。歯周病が悪化すると細菌などが歯ぐきから血管内に侵入して全身へと流れていきます。これにより様々な疾患を悪化させたり罹患しやすくなったりします。下記に歯周病が影響する全身疾患をご説明致します。

心筋梗塞・狭心症

歯周病菌が歯ぐきから血管内に侵入して心臓へと運ばれるとプラークが血管壁に付着して炎症を引き起こします。これにより血管を圧迫して心筋梗塞や狭心症を引き起こすおそれがあります。実際に、心筋梗塞や狭心症の患者の血管細胞から歯周病菌が検出された報告もあります。

認知症、アルツハイマー病

認知症の約6割以上はアルツハイマー病と考えられていますが、アルツハイマー病は歯周病と密接な関係がある事が分かっています。(名古屋市立大学大学院医学研究科 道川誠教授「歯周病で加速するアルツハイマー病分子病態と認知機能障害」の研究を参照)

アルツハイマー病の原因は完全には解明されていませんが、一説にはアミロイドβやタウタンパクと言われるたんぱく質が脳に異常に溜まってしまい、脳細胞を損傷したり神経伝達物質が減少することで脳全体が委縮して起こると考えられています。

道川教授の実験では、歯周病に罹っているマウスとそうでないマウスを3か月間飼育してどちらの方がアミロイドβが蓄積されるかを比較しました。その結果、歯周病に罹っているマウスはそうでないマウスに比べてアミロイドβの量が顕著に上昇しており認知症をより進行させている事が分かりました。

歯周病の治療やケアを行うことでアルツハイマー病の発症を予防したり症状の進行を防ぐことが期待されています。

糖尿病

歯周病は糖尿病を発症したり症状を進行させてしまうリスクがあります。糖尿病はインスリン分泌が少ない、もしくは分泌されてもうまく働かなくなることで血糖値が高くなってしまう病気です。歯周病が進行してしまうと炎症を強めるサイトカインと呼ばれるたんぱく質が増加します。サイトカインが歯ぐきから血管を通じて全身に流れるとインスリンの働きを遮断してしまう為、糖尿病を悪化させます。

歯周病の治療を行うことで血糖値が低下して糖尿病の症状が緩和されたケースもあります。

誤嚥性肺炎

誤嚥性肺炎とは物を飲み込むときに誤って気管に入ってしまい、この際に唾液中に含まれる細菌が肺に感染することで引き起こされる肺炎の事です。この誤嚥性肺炎を引き起こす細菌の多くは歯周病原性細菌を中心とした口腔細菌であると言われています。つまり歯周病に罹っている場合、誤嚥性肺炎を引き起こしやすいという事になります。

早産・低体重児出産

歯周病は症状が進行してしまうと炎症物質が血管を通じて血液中に流れて全身へ巡っていきます。これが子宮に流れてしまうと子宮収縮を誘発し早産や低体重児の出産につながってしまう可能性があります。ある研究では歯周病が無い妊婦に比べて歯周病がみられた妊婦は早産や低体重児の出産リスクが7.5倍高かったという報告もあります。(OffenbacherSetal. JPeriodontol 1996の研究参照)

歯周病の進行と症状別の治療について

歯周病は放っておくと症状は進行していきます。

進行状況に応じて処置の方法も変わっていきます。

歯肉炎・軽度歯周炎

プラークや歯石が溜まり、歯ぐきが炎症を起こしている状態です。赤く腫れてブヨブヨとしている事があります。まだ軽度な状態ですのでこれ以上症状を進行させない為に、正しい歯みがき方法の指導と歯石除去を行います。この段階ではご自宅での歯みがきと歯石除去だけで1週間~2週間ほどで歯ぐきはかなり良い状態に戻る事が多いため出来るだけ早くご来院されることをおすすめいたします。

中度歯周炎

中度まで歯周病が進行すると歯を支えている歯槽骨が半分近くまで溶けて歯がぐらつくようになります。そのため、このまま放置してしまうと歯を失ってしまう可能性が高まります。軽度の状態よりも深い位置に歯垢や歯石が溜まっているため、場合によっては歯ぐきを切開して歯垢や歯石を取り除く外科的な処置(フラップ手術)が必要になることがありますが、まずは進行を止めるために歯垢、歯石の除去とご自宅での歯みがきの指導をしたのちに定期的にご来院いただき歯周病が進行していないかチェックをしていきます。

重度歯周病

重度まで歯周病が進行している場合、歯槽骨が大きく失われている状態ですので歯が抜けてしまう可能性がかなり高くなります。まず、歯周病の進行を止めるために原因となっている歯垢・歯石の除去をします。場合によってはフラップ手術をして歯垢や歯石を除去する必要があります。また、歯周組織が大きく破壊されている為、これらの組織を再生させる歯周再生治療をおこないます。それでも症状が改善されない場合やそもそもこれらの治療が既に出来る状態ではない場合、残念ながら抜歯となります。

フラップ手術

フラップ手術とはプラークコントロールやスケーリング・ルートプレーニングでは除去出来ない深さまで歯垢や歯石が溜まってしまった場合に、歯ぐきを切開して除去をおこなう歯周外科手術のことをいいます。外科手術というと大げさに聞こえますがしっかりと麻酔をしてから処置致しますので術中に痛みはほとんどありません。また、歯垢や歯石の除去が完了しましたら切開した歯ぐきを縫合して元に戻し1週間程で抜糸しますので傷跡が残ってしまうという事もほとんどありません。

フラップ手術後の注意点

フラップ手術とは

・麻酔が切れた後に痛みがある場合には痛み止めを服用してください。
・術後、麻酔が完全に切れるまで飲食は控えてください。
・傷口を糸で縫合しますので歯科医院で抜糸を行うまで触らないようにしてください。
・手術当日は飲酒をお控え下さい。
・手術当日はお口を強くゆすぐと血が止まりにくくなりますのでご注意ください。

歯周病を予防するには?

歯肉切除術

歯周病の原因は歯垢(プラーク)にあります。そのため、プラークが付着しないように毎日の歯みがきやデンタルフロスを使用するなどのセルフケアがもっとも重要です。かつ、セルフケアだけでは除去しきれない歯垢や歯石を歯科医院で定期的に除去することで歯周病のリスクは大幅に下げる事が出来ます。

つまり歯周病を予防するには正しいセルフケアと歯科医院での定期的なケアが重要となります。

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